七月半ばの新宿は、日が落ちてもまだ蒸している。こういう晩に熱いものを腹へ入れる気には、どうしてもならない。かといって蕎麦でも素麺でもない冷たい麺が食べたい、という面倒な注文をつけていたら、西新宿七丁目に冷麺の専門店があるらしいと聞いた。焼肉屋の締めでしか食べた記憶のないものを、単独で看板に掲げている。なかなかの物好きだと思ったが、それを目当てに出かけていく自分も大差はない。
十字路沿い、幕がやたらと大きい

駅からは少し歩く。西武新宿駅の北口からも大久保駅の南口からも徒歩4分ほどで、ついでに寄れる距離とは言いがたい。ただ、着いてしまえば迷いようがない。大きな十字路に面していて、店頭には冷麺の二文字を刷った幕が堂々と下がっている。ビルの一階、やや奥まった位置ではあるが、幕と立て看板のおかげで通り過ぎることはなかった。
「780円〜」の“〜”をどう読むか

看板には「あなただけの冷麺を。780円〜」とある。この“〜”がこの店の設計そのものだ。
まずベースを4種から選ぶ。令和の冷麺が780円、コク旨豆乳冷麺も780円、胡麻香る濃厚担々冷麺が830円、さっぱりレモン冷麺が900円。麺量は並盛か大盛(+100円)、辛さは普通・辛口(+50円)・激辛(+100円)。そのうえでトッピングを一品ずつ足していく。刻み大葉などが50円からで、味玉のような定番はもう少し張る。ご飯ものは「和風出汁で食べるご飯」という括りで、白いご飯200円、こだわりの卵かけご飯350円、カリカリ梅とにんにくの炊き込みご飯350円。組み合わせるのが面倒なら、令和の冷麺おすすめ盛りと卵かけご飯を合わせた「おすすめ冷麺セット」が1,350円からある。
つまり780円というのは麺とスープだけの入口価格であって、そこで止まる客はまずいない。看板の下段には深夜料金の表記もあり、同じベースが1,280円に跳ね上がる。新宿の少し外れで深夜4時まで開けている店の事情を察するところだ。
注文はパネル。無言で素の一杯にたどり着ける

注文は入口脇のパネルで先に済ませる方式だ。ここが最初の関門で、トッピングは自分で足さないと一切乗ってこない。私は事前に看板を眺めていたから良かったが、腹を空かせて画面を早送りすれば、麺とスープだけの一杯が普通に出てくる。「盛り合わせが標準」という思い込みで来ると、卓上で軽く途方に暮れることになる。
素の状態でも、麺は堂々としている

来た一杯は、見た目にはずいぶん潔い。まさに素うどんならぬ素冷麺である。
ところが食べると印象が変わる。麺はしっかりコシがあり、噛み切るのに軽く抵抗がある。歯を返してくるタイプの麺で、これだけで食べ応えが立つ。スープも薄めた酢水のようなものではなく、出汁がきちんと効いていて、飲んでみると麺よりむしろスープのほうを褒めたくなった。
なお、これは盛岡冷麺の系統であって、焼肉屋で出てくる韓国式のものではない。牛のスープに唐辛子とキムチ、という絵を描いて赴くと肩透かしを食う。そこは看板の名前より、麺の素性を先に確認しておくが吉である。
別添えという設計の、良し悪し
上の写真の通り、トッピングは麺に乗って来ず、小皿で別に届く。これが存外よかった。最初の何口かは素の状態で麺とスープを味わい、途中でキムチを落として味を変える。ネギや薬味も同様で、一杯のうちに二度おいしい。種類もそれなりに揃っていて、選ぶ楽しみがある。
裏を返せば、さっき書いたとおり、気づかなければ最後まで素のままだ。良い設計だと思うが、注文パネルにもう一言あってもいい。
次は刻み青唐辛子か明太子辺りをトッピングしてみるのも良きかな
辛いものばっかりだね!
惜しいのは、そこまで冷えていないこと
正直に書くと、麺もスープもぬるい。冷麺と名乗る以上、歯にしみるほど冷えていてほしかった。夏場の需要を取りに行く商品なのだから、氷追加なり「キンキン」なりのオプションが50円で買えるなら、私は迷わず押す。ここは減点材料として残しておく。
※後日店舗のXで見たところどうもこの日は冷凍庫故障で氷が作れなかった模様。本来であれば出汁で作った氷がつくらしい。
全席カウンター。長居する場所ではない

店内は開店から日が浅いようで、清潔感は十分にある。ただしテーブル席はなく、壁に面した高めのカウンターが12席だけ。中央がぽっかり空いた不思議な配置で、腰を落ち着けて長話をする雰囲気ではない。入口が狭いぶん出入りのたびに軽く詰まるが、店員が手際よく整理していたので実害はなかった。この日は席の入れ替えで片付け待ちが少し出た程度である。
結論:入口価格ではなく、着地額で見る店
私の卓は結局1,500円弱に着地した。ラーメン一杯が平気で1,000円を超える昨今、焼肉屋の締めで頼む冷麺が単品900円前後することを思えば、大盛にしてご飯まで付けたこの額はさほど法外でもない。麺の質と出汁の出来を考えれば、支払って惜しい金額ではなかった。
ただし780円という数字だけを見て向かうと、会計で表情が変わる。この店は入口価格ではなく着地額で判断するのが正しい。温度の詰めが甘い点もあわせて、そのうえで悪くない一軒だと思う。暑い盛りに、麺だけをさっと手繰って帰りたい諸氏には、選択肢として十分に立つ。また来る。
店舗基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 令和の冷麺 新宿店 |
| ジャンル | 冷麺 |
| 所在地 | 東京都新宿区西新宿7-6-7 Air.C西新宿ビル 1F |
| アクセス | 西武新宿線 西武新宿駅 北口 徒歩4分/JR中央線 大久保駅 南口 徒歩4分/都営大江戸線 新宿西口駅 徒歩6分 |
| 営業時間 | 火〜土 11:00〜15:00(L.O.14:45)、18:30〜翌4:00(L.O.3:45)/日 11:00〜15:00(L.O.14:45) |
| 定休日 | 毎週月曜 |
| 席数 | 12席(全席カウンター・個室なし) |
| 予算(ひとり) | 〜999円(食べログ)/訪問時実績:1,500円程度 |
| 電話 | 03-6279-2562 |
| 支払い | クレジットカード・電子マネー・QRコード決済可 |
| 訪問日時 | 2026年7月15日(水)19時ごろ |
| 混雑 | 席の入れ替えで片付け待ちが出る程度 |
※情報は食べログおよび店頭メニュー看板を参照(2026年7月時点)。価格・営業時間は変動するため要確認。
総合評価
★★★★★★★☆☆☆(7/10)
麺のコシと出汁の出来は専門店を名乗るだけあって確かで、別添えトッピングで味を動かせる設計も良い。差し引くとすれば、冷麺としての冷たさがもう一段ほしいことと、トッピングを自分で足す方式に気づかず素のまま食べ終える客が出そうなこと。この二点が詰まれば、評価はもう半歩上がる。
※後日店舗のXで見たところどうもこの日は冷凍庫故障で氷が作れなかった模様。本来であれば出汁で作った氷がつくらしい。